《The forest universe of the four seasons》
 * 上泉伊勢守にまつわる歴史とゴルフ場のお話 *

                                 →河越夜戦へ 

                                 →難波田城へ 

 上泉大胡伊勢守藤原秀綱 
*関越ゴルフ倶楽部への道すがら
 赤城山
  
  
    
  関越自動車道に練馬で乗って、40、50分も北上すると、正面に榛名山が迫ってくる。右手
  には赤城山がなだらかな裾野をどこまでも東西に長く引きながら聳え立つ。
 神流川を越えて埼玉県から群馬県に入り、直進すると前橋、新潟方面に関越自動車道は延びて いるが、大きく左にハンドルを切り上信越自動車道に入ると正面に妙義山が奇怪な容姿を見せ せてくる。妙義山の右後方には浅間山が勇姿を誇示し、妙義の左に目を転じるとまるで頂上を 平らに均したような荒船山が横たわっている。荒船山は荒海に船が航行する様の故に命名され たとされる。
妙義山 浅間山 荒船山

 月に1度この大パノラマを楽しみながら、一年ほど前からゴルフ仲間と連れ立ってこの道を通 う事になった。関越ゴルフ倶楽部の月例会に出る為である。早朝5時30分頃に志木市の自宅 に集合し、1台の車に乗り合わせ今日のコース攻略方や前回の反省をしきりに皆でしながら、 子供の遠足時のようにハシャイだ気持ちになる。1人で月例会に出る時は高速代節約のために、 大概は手前の花園ICや本庄児玉ICで降り国道254号や近道を走っていたものである。
 マイカーにCDを積み込んで、誰気兼ね無く、かなりボリュームを上げて好きな音楽を聴きな がら1時間一寸走るのも実に至福の時であった。何かの雑誌で読んだが、篠田監督は栃木県の 烏山CCに行くとき、愛車のポルシェを駆って常磐道の那珂ICから那珂川に沿って大好きなク ラッシックを聞きながら走るのを無上の喜びとしているのだそうな。那珂ICからだといくら ポルシェでも2時間程も掛かるとおもうが、なんとなく判るような気がしたものである。特に、 新緑や晩秋の早朝に道路を一人占めで飛ばすのは、都会生活のウップンを晴らすのに最適に違 いない。
 話が逸れたが、関越GCに行くには、国道254号で神流川を渡って群馬県に入り、鬼石方面 に3Kmほど走って山沿いの道を抜けると早いのでいつもそのルートを利用していた。  途中藤岡市の西平井という所を通っていた。ここは藤岡CCやツインレークスGC、緑野CC に囲まれた場所であるが、実はここにかって「平井城」があり関東管領の山内上杉憲政の居城 であった。上泉伊勢守と深く係わり合いのある城址である。上泉伊勢守信綱は「新陰流」の始 祖で剣聖とまで言われる人物であるが、柳生宗矩の父柳生宗厳に「新陰流」を伝授した。宗矩 は「柳生新陰流」としそれを完成したことは多分ご存知のはずである。
 山内上杉の家紋は竹の葉に向かい雀。  鎌倉以上の殷盛を極めた平井城近辺も今は面影も無し  鮎川を望む断崖の上に、僅かに城址と墓地が「関東管領山内上杉」と書かれた藤岡市の故郷見直 しの旗が空っ風にはためいているだけ・・・。  
 

*上泉伊勢守信綱とは 季長・秀綱・伊勢守・武蔵守・従四位下 兵法家・箕輪城主長野業盛の臣  伊勢守は名前を源五郎→ 秀綱 →信綱 と変えて行ったが、伊勢守が最もポピュラーで る。正式には「上泉大胡伊勢守藤原秀綱」と言う。祖先は藤原秀郷をもつ清和源氏の一門であ あった。源五郎の名は23歳で元服するまでで、秀綱は54歳で武田信玄が烏帽子親となって信 玄の信の字を貰い信綱と称した。
 今後上州、上野(こうづけ)を中心に、16世紀に活躍した上泉伊勢守の活躍ぶりを見て行く。 足利尊氏が暦応元年(1338)に室町幕府を開いてから170年後、10代目足利義稙(よしたね)が 将軍職を継いだその年、上泉伊勢守は赤城山の麓、上野国(こうづけのくに)上泉城で上泉 武蔵守義綱の二男として誕生した。当時、足利幕府は弱体化しており、織田信長によって天承 元年(1573)15代将軍義昭が京を追放されるに至ってついに幕を閉じるのであるが、上泉伊勢 守はまさにそうした時代に生を受けたのである。
織田、北条、武田、長尾、今川等が台頭し室町幕府の力は衰微の一方であった。 幼名を源五郎と言った伊勢守は、幼少にして常陸の鹿島へ修行に出され、松本備前守や塚原 ト伝から剣の修行を受け、更に鹿島から帰った伊勢守は23歳で元服し、名を秀綱と改めた後 愛洲移香斎久忠から陰流を伝授されている。兄上泉主水丞が19歳にして夭折したため、上泉家 を繼ぎ城主になった。城主となった後も鹿島、赤城山において剣の修行を続け遂には剣聖と呼 ばれる域にまで達した。
当時関東地方は上杉が関東管領として将軍を助け執政していたが、その力は弱まるばかりで あった。山内上杉憲政が主城とした平井城を構えていた。 上州の当時の城で著名なのは、平井城、国峯城(小幡城)、箕輪城、厩橋城そして、伊勢守 の大胡城、上泉城などであろうか。
 上泉に帰った伊勢守は赤城山中に篭って更に修行を続ける。上泉城から赤城山を上り切る と大沼がある。赤城山は1251年(建長3年)に大爆発しそれ以来静まりかえっている。上泉からは 16kmほどで三夜沢に到達するが、ここは荒砥川の源流の地である。伊勢守はここに修行場をつく り、一人でまたは疋田文五郎と修行を積んだ。
 「春の温もりが里から僅かづつ這い登ってくる新月の夜、西南から東北に流れ星が音もなく赤 城の鬱蒼たる木立に消えた時、伊勢守は微かな”殺気”を感じて、座禅の姿勢を僅かに崩した」 「誰か」 「・・・」 突然、斜め後から鋭い刃音が伊勢守の右肩目掛けて落ちてきた。 伊勢守は僅かに左回転しながら、既に腰間から太刀を一閃のもとに、その音も無く浴びせた相 手に打ち込んでいた。 刀を掴んだままの右手が三夜沢の苔むした修行場に転げ落ちた。 「退け」 十河九郎兵衛高種(そごうくろうひょうえたかたね)は、稲津孫作と土井甚四郎に声を掛け、 転げ落ちる様に荒砥川を駆け下りた。 この十河九郎兵衛高種はこれから、度々伊勢守に試合を申し込み、その全てで無視され最後に 瀬田の唐橋の上で伊勢守に切り捨てられることになる。
 天文20年3月(1551年)、河越で勝利した北条氏康はついに上杉憲政の平井城攻めを開始 した。平井城の西方には神流川が流れており、上州と武州を分け隔てているが、北条方はあっ という間に神流川まで攻め上ってきた。上杉大ピンチである。ところが箕輪の長野業政が駆けつ け九死に一生を得た。一旦小田原に引いた氏康は同年秋再度平井攻めを行い、今度は易々と平 井城を陥落せしめた。と言うより、上杉憲政は城を捨てて越後の長尾景虎を頼って逃げ延びた。
 翌天文21年春4月、雪解けを待って長尾景虎が鳥居峠を超えて松井田、平井へ怒涛の進軍 を行い、平井城に立て篭もる北条軍をいとも簡単に駆逐してしまった。北条は已む無く武州松 山城に引き、景虎が越後に引き上げるとまたしても上州攻めを行い。景虎が出てくると退き、 帰ると攻める事を繰り返した。
 これに懲りた景虎は防御に向いていない平井城を討ち捨て、厩橋(現前橋)を以降本拠地と した。天文24年北条氏康はついに厩橋城を落とし、上泉伊勢守の大胡城攻めを開始した。攻 める北条は2万の大軍、対する伊勢守守る大胡勢はわずか8百。ここで秀綱は敗北を悟り、戦 わずして大胡城をもぬけの殻として敗走し、平井城へ入城した。翌天文25年、長尾景虎改め ”上杉謙信”が上州に出陣してくるや、上泉伊勢守信綱は大胡城奪還に向けて獅子奮迅の大活 躍をするのである。上杉勢が見守る中、勝手知ったる我が大胡城の奪回に、城主秀綱が単騎槍 を抱え込んで鬼神の如き働きをしたとされている。謙信は厩橋城も北条から奪い返した。
 ところが、この頃から武田信玄が盛んに上州への侵略を始めだし、箕輪までも攻めるに至っ た。謙信が越後から出て来ると退却していたが、国峰の小幡信貞が武田方につくや一気に武田 の勢力が上州で強まりはじめた、時に上泉伊勢守信綱53歳の頃である。

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 <参考>
関八州と主要な邑
安房、下総(しもうさ)、上総(かずさ)、常陸、下野(しもつけ)、上野(こうずけ)、武蔵、相模 
 

参考文献・・・上州、武州の当時の剣豪、主に上泉伊勢守信綱ですが、は下記文献が参考になります。         松本清張の「黒い空」は現代物ですが、500年前の上杉が主役です。  -------------------------------------------------------------------------------------- 上泉伊勢守信綱 永岡慶之助/著 叢文社 柳生石舟斎 レグルス文庫 吉川英治/著 第三文明社 真剣 新陰流を創った男、上泉伊勢守信綱 海道竜一朗/著 実業之日本社 宮本武蔵『五輪書』の哲学 前田英樹/著 岩波書店 二十五人の剣豪 宮本武蔵から近藤勇まで PHP文庫 戸部新十郎/著 PHP研究所 剣の思想 甲野善紀/著 前田英樹/著 青土社 人物日本剣豪伝 人物文庫 戸部新十郎/ほか著 学陽書房 剣の天地 男振 忍びの旗 旅路 完本池波正太郎 池波正太郎/著 講談社 武道の謎を科学する 高橋華王/著 砂書房 剣豪 剣一筋に生きたアウトローたち 草野巧/著 新紀元社 新編中山義秀自選歴史小説集 第6巻 中山義秀/著 宝文館出版 剣豪伝説 小島英煕/著 新潮社 戦国太陽伝 吉村正一郎/著 実業之日本社 秘剣、豪剣、魔剣 新潮文庫 時代小説の楽しみ 縄田一男/編 新潮社 室町お伽草紙 青春!信長・謙信・信玄卍ともえ 新潮文庫 山田風太郎/著 新潮社 日本史・剣豪名勝負95 歴史を彩ったスゴ腕の剣客たち にちぶん文庫 森川哲郎/著 日本文芸社 海鳴り忍法帖 時代小説文庫 山田風太郎/著 富士見書房 実説武侠伝 文春文庫 海音寺潮五郎/著 文芸春秋 非情の戦国史 勝利と挫折の人間模様 大陸文庫 南条範夫/著 大陸書房 黒い空 松本清張 角川文庫



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