* 外地秩父七峰縦走縦走 *  

 比叡山延暦寺に「千日回峰行」と言う7年間に渡る荒行がある。最初の100日間は
一日30kmを念仏を唱えながら歩き、次は60kmを100日、京都大廻りではなんと84kmを
100日間も続けるのである。その間7日半ほどは断食、断水、不眠も行うそうである。

 08年4月20日、東武鉄道主催の「外秩父七峰縦走縦走ハイキング」に参加してきた。
「千日回峰行」に比べれば千分の1程もないものであるが、日頃鍛えていない身にと
ってはそれは極めて過酷なものであった。

 下図は東武鉄道作成のハイキングコース図である。
42kmの距離は、JR中央線では新宿〜高尾、東海道線では東京〜戸塚程度であるが、こ
のコースで平坦なのは7〜8kmで、残り30数キロは登りか下りであり、800mを超える峰
を4つも越え、700m前後の峰を3つ登り下りするのだから大変である。




 早朝5時発の電車に東武東上線の柳瀬川駅から乗って、6時前に出発点である小川町
駅に着いた。駅前にはすでに大勢のハイカーが並んで受付を待っている。早速受け付
けを終えて出発したのは6:10であった。
 







 途中7つのチェックポイントがあって、そこでスタンプを押して貰い、全てが揃う
と完歩という事になる。この記録カードは何回もポケットから出し入れしているとク
シャクシャになってしまった。





 完歩出来なくなったときは途中下山し、バスで小川町まで帰る事が出来る。最終
は二本木峠の16:10である。この時間までにここにたどり着かないとバスも無くなる
のである。最終ゴール時間は18:30であり、今回の僕の18:02は相当危ういものであ
った。途中風景を楽しんでいる時間は無かったのである。昼食時10分程度座ったき
りでずっと歩き詰めであった。だから最後の方では写真を撮る気力も無かった。

 出発には2ルートあり、一つは東武小川町駅からともう一つは東武竹沢駅からと
である。竹沢駅だと小川町から寄居方面に1駅行ってそこからという事になる。竹
沢からの方が断然楽であり、混雑は少ない。今回はあえて小川町から出発した。
 
 暫くは市街地を歩く。



 段々と家並みもまばらになり、のどかな風景が広がる。



 

 
  
 この辺り桜や桃もまだ残っている。

 



 
 これが目指す「官ノ倉山」である。



 このルートには鎖場があり、渋滞が激しい。でもまだ皆元気に登って行く。



 「官ノ倉山」は頂上が狭いので、実際には直ぐ隣の「石尊山」を通って最初のチ
ェックポイントへ向かう。「官ノ倉」到着は7:36だった。


「石尊山(せきそんさん)」
 石尊山という名前の山は関東近郊に沢山あります。浅間山に寄り添うような長野
の石尊山は標高1,667mと最も高く、足利市の486m、北茨城市の412m、君津市の348m
と続きます。ここ小川町の標高は344mと低山である。




 ここから一旦山を降りてバス道を「和紙の里」まで平坦な道を50分ほど歩く。
「和紙の里」でトイレを済ませてから、いよいよ登りが始まる。
「萩平丁字路」までは舗装された車道を行く。ここまでは「官ノ倉山」からの標準
時間は160分である。この辺りまでは順調である。



 道の傍にはすみれや木イチゴの花が沢山咲いている。





 右手には午後到達するであろう「大霧山」「登谷山」方面の展望が開ける。





 萩平集落へは途中少し下るのだけど、杉林を抜け、三葉躑躅が咲く山道を歩く。
勿論まだ余力は十分である。廻りの誰もが元気に見える。お喋りも聞こえる。






 野生の青木が沢山自生している。赤い実を付けている。この青木は青木葉とよば
れAucuba japonicaとして世界に知られている。

『青木葉が 赤き実を付け 人誘う』

 



 僕もこの辺りまでは写真を沢山撮る余裕があった。
萩平集落にはツツジ、椿、桃、レンギョ等が咲き乱れている。








 皆段々と無口になってきた。中には友達と来ていて、会話をしているが、大勢が
歩いている割には殆ど口を利かない。これからの事を考えてか、唯黙々と登り、下
り、滑り、時々水を飲む。












 ここからが本格的な山登りとなる。「笠山」は標高837mであり、萩平集落からの
所要時間は60分である。急峻な登りが続く。
 





 この「笠山」は下の写真の通り別名「乳房山」とも呼ばれる、乳首が立っている
ではないか!



 苦労して登った所に第二のチェックポイントがあり、そこでスタンプを押して貰
ってすぐ「笠山峠」へ向けて急な坂道を降りて行く。「笠山」到着は10:58だった。



 一旦林道に下りて、そこからの眺望をチラッと眺めて「堂平山」めがけて再度登る。






 堂平山(どうだいらさん)には天文台があり「ときがわ町」の「星と緑の創造セン
ター」がある。この30分ほどの登りは本当にきつかった。もう限界なのかなと思え
てくる。両手ストックを持参したのだけれど、苦しくて苦しくて・・・。(11:40着)

 これはスタッフの方に撮ってもらったのだが、精一杯の作り笑顔であり、本当は
息も絶え絶えなのである。でも止めることは出来ないのだ、皆に言いふらした以上!






 ここで昼食を摂った。おにぎり2個と、200円のフランクフルト、100円の胡瓜。




 2年前の完走時に貰ったキャップを被っていたためか、初参加の人が心配顔で何
人からもこのペースで完走できますか?もう半分くらい来ましたか?などと聞いて
くる。ここから「剣ヶ峰チェックポイント」までは平らなラクチンな道である。
「剣ヶ峰」到着は(12:05)。

 このハイキングの最高点「剣ヶ峰」は標高876m、この急な階段を登ることになる。
もうこの辺りで体力を使い切ったようだ。(まだ道半ばも来ていないのに・・・)




 次に「剣ヶ峰」から「白石峠」へ向かう、15分程度掛かる。
この写真の中央が「大霧山」その向こうに「皇鈴山」「登谷山」が遠望される。




 この「白石峠」が全体の中間点であり、ここの下山時限は14:30である。
「白石峠」からは丸太組のきつい登りがあり、登れば当然ながら下りがある訳で
平らなところを歩きたい!

『深山入り 三葉躑躅に 惑わされ』





 ここから「定峰峠」までは約60分の行程だ。小雨が降って来だした。この峠は桜
がまだ沢山咲いていて、売店も在り、皆小休止している。甘いものが食べたくなり
アイスモナカを購入。(160円也)

「定峰峠」からは急な登りが暫く続き、今度は「旧定峰峠」目指して急坂を降りて
行く。この間およそ1時間。「旧定峰峠」から30分ほど上下を繰り返しながら最後
に急な登りを終えるとそこは「大霧山」(おおぎりやま・767m)である。




 チェックポイントの手前で何人目かのカウントをしている。




「大霧山」からこれから向かう方向を撮り、早速下山を開始する。この下りは急で
雨でぬかるんでいるため滑って転ぶ人がいる。

 ようようの思いで「粥新田峠」まで降りてきた。ここから「二本木峠」「皇鈴山」
(みすずやま)までは林道で眺めも良い。(約1時間15分)








 この「二本木峠」から先にはバス連絡はなく、ここを16:10までに到着しないと
足が無くなるので決断を迫られる、続行するか否かをである。

「皇鈴山」に登ってスタンプを貰い、ゴールの寄居方面を撮る。ここの眺望は抜群
だ。






 一旦林道に下りて、少し歩き、いよいよ最後の坂道を登ると「登谷山」の最終の
チェックポイントである。もう登りがないのが何より嬉しい、本当に嬉しい。
 青い橋が寄居のゴール近くの橋(正喜橋)だ。でもここからまだ約10kmもある。



「日本水(ヤマトミズ)の接待所」この水は環境省選定の日本名水百選の一つで
『「日本水」は日本武尊が東征の折、戦勝を祈願し御剣を岩壁に刺したところ、た
ちまち水が湧き、この冷たさに一杯しか飲めなかったとの伝説から「一杯水」の別
名がある。』と書かれている。これが流下し、他の川と合流し「風布川」となる。

「風布」は最北端のみかんの栽培地としても知られている。
ここで空いたペットボトルに水を補給して、だらだらと林道を下っていく。 





 上の方には殆ど人家はないが、ところどころに躑躅が咲いていたりする。小鳥も
盛んに啼く。

 もう誰もお喋りする人はいない、精魂尽き果てて、あとはゴール時限までに辿り
付くことのみで精一杯なのである。(この大会は昨年途中で止めた人はその続きを
再開でき、途中までバスで来られるため、その人達は元気なのだろうが・・・)

 石川さゆりの「津軽海峡冬景色」に
『〜北へ帰る人の群れは誰も無口で海鳴りだけをきいている〜』
 のくだりがあるが、そんな心境なのである。





 出発してから42kmのゴール地点にたどり着いたのは18:02であった。トータルの
時間は11時間58分掛かった訳である。パンフレットに記載されている標準時間は
12時間25分である。途中何人にも追い抜かれた事や、急坂でよちよちしか登れな
い事などを思うと”もう来年は無理なのかな?”と思えて来る。




ゴールし、全てのチェックポイントのスタンプが揃っていると「完歩証明書」と
「ウエストポーチ」または「キャップ」が貰える。
        


さあ、来年はどうしようかしらん!
   <終わり>


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